三月の彼に

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 第二校舎の方まで移動すると、廊下の先の女子トイレの方を指して 「ほい」  ガサッと持っていた袋を私に投げ渡した。 「え?」  中身を見てみると、真新しい紺色のジャージが入っていた。 「着れば? 出るんでしょ、体育祭」 「……間宮君は?」 「俺はこのまんまでいいよ」  Tシャツと短パンにスニーカー。確かに、今すぐにでも走れそうな格好。  間宮君のジャージはぶかぶかすぎて、肩のところがスカスカで、袖も捲らなければ長過ぎる。何より、胸の「間宮」という文字が気恥ずかしい。  廊下で水を飲んでいた間宮君は、着替えた私を振り返って見て、 「いいじゃん。新品だよ、それ俺一度も着てないから」と自慢げに笑った。  間宮君はほとんど学校に来ていなかった。  噂では地元の怖い不良グループとつるんでいるとか。クラス替えの際、名簿に名前があったものの、担任からもほとんどいないものと見なされていた。
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