三月の彼に

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 だから、今日というこの日に間宮君がなぜ教室にいるのか――。   それが不思議でならなかった。田中さんも取り巻きの男子たちも、間宮君の存在自体に頭がついていっていない感じだった。 「間宮君。どうして今日は学校に?」 「え、あー。走りたかったから。だめ?」  まるで「本能で」みたいな、そんな単純明快は答えに私は思わず笑ってしまった。 「不登校の不良問題児」、先生たちからはそんなふうに呼ばれている間宮君は、全然怖くなんかなくて、シンプルで、私をかばってくれた優しい人だった。  体育祭で間宮君は大活躍した。もともと運動神経が良かったせいもあるけれど、目玉のリレーでは他の種目で怪我をしたアンカーの代理で出場、見事、最後の一周で逆転勝利を収め大いに盛り上がった。  だけど、今日一番の活躍だった間宮君は、本当に走りにきただけのようで、体育祭が終わると颯爽と帰っていってしまった。
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