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十一月の水曜日、珍しく間宮君が屋上で教科書を広げているので覗き込むと英語の問題を解いていた。
「現在完了って何? 現在なのに完了してるの? 終わってるの? 意味分かんないんだけど」
私が文法を丁寧に説明すると、
「うわ。やっぱ藤波って頭いいんだな」
驚いたように言う。
「間宮君は喧嘩が強いよね」
「何それ。馬鹿にしてる?」
「違う違う。よく映画でさ、ゾンビとか、地球外生命体が襲ってきて逃げるシーンあるじゃん。私だったら逃げ遅れて、真っ先に死ぬなっていつも思うの。戦うこともできないし」
「そんときは、俺が助けてやるよ」
間宮君は何でもないことみたいにスラッとそんなことを言って微笑んだ。
それがどんなに私の胸の奥をキュッと熱くしたのかも知らずに――。
そうしてまた教科書を覗き込むと、ちらっと襟の隙間から見えた首の後ろに切り傷が見えた。じっと見ていると、間宮君は隠すように襟元をギュッとやる。
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