三月の彼に

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 三月の午後の柔らかな光がガラス窓に反射する。  カラン、という軽やかな音とともに小柄の女性の店員さんが扉を開け笑顔を向ける。顔の周りにはねた毛先がキャラメル色で柔らかい印象を作っている。  店内から、オリーブオイルとニンニクの香ばしい匂いがふわっとした。   事務所の前のビルの一階に新しくできたイタリアン。 「テラス席のご案内となりますが、宜しいですか」  二時を回っているので、ランチにしては遅めの時間帯だが、まだ店内は混んでいるようだ。  テラス席に通された私たちはチェック柄のブランケットを受け取り膝にかける。透けるように薄い紙に黒のインクで綴られたメニューの文字を見ながら、時折ざっと吹き荒れるように一吹きする風に、春がやってきたのだ、と思う。 「どれにしよっかな」  遠野先輩が、はしゃぐような声で言う。  カルボナーラ、オイルパスタにボンゴレ。ランチメニューは三つ並んでいたが、私の心は決まっていた。 「やっぱり、桜えび、ですかね」 「全部美味しそうだけど、私もそれにしよ」  私たちは、桜えびとキャベツのオイルパスタを二つ頼んだ。
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