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しばらくして白玉一号が戻ってきた。書籍に登録された棚番号とアプリの在庫、店内の見取り図とも連動しているらしく、ロボットだけでもお客さんを案内できている。
「面白いね。案内は棚の前までだけどお客さんは探せてるみたい。他の売り場にもいるの?」
「いえ、うちだけです。店長に頼まれて夏前から制作していました」
「もしかして清水くんが作ったの?」
「大学でロボット工学を学んだので勉強も兼ねています」
充電ステーション『白玉一号の小屋』のそばでロボットはうろうろしていた。うまく入れないのかと思ったらバックで入庫した。お客さんたちが拍手をする。
「なんか気に入らないにゃ」
カウンターで伏せていた大福がつぶやいた。急に飛び降りて白玉一号の前に立ちふさがる。
「やめなさい」
僕が制するのと同時にうしろにいた男性のお客さんが言った。
「検索お願いできますか。『英会話リスニング 完全攻略ガイド』なんですが」
「少々お待ち下さい」
パソコンで在庫検索をかけている間にそのお客さんは白玉一号について売り場に行ってしまった。書籍を手にしてすぐレジに戻ってくる。
会計が終わると大福が僕を見上げた。
「タイヨウも気に入らないにゃ?」
「そんなことありません」
斎さんと清水くんが白玉一号の前で何か話している。二人は幼なじみで、僕より勤務年月が長い。白玉一号がいなくても彼の方が本を探すのは圧倒的に早い。
二人が笑いあっているとまた白玉一号が出動した。おかげで僕はずっとレジカウンターにいられる。案内に出る回数が多くて嫌になった日もあったんだから彼の功績はすごいじゃないか。
「我が物顔でうろつくなんて大福が許さないにゃ」
心の声を代弁された気がして、なんだか情けなくなった。
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