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白玉一号のおかげでレジカウンターでの作業が早く終わった。パズルの値付けもコミックの発注も終わって手持ちぶさたになる。
「タイヨウ、暇なんにゃ」
「そんなことありません」
「あいつに仕事を取られたんにゃ」
「そういうことじゃ……」
こっそり言い合っていると五十代の男性客が怒りながらレジにやってきた。
「あのロボット、一方的に案内しといて勝手に戻りやがった。商品はどこだよ!」
小屋を見ると白玉一号が入庫するところだった。怒鳴り声もなんのそのでランプを消灯させる。
「何をお探しでしょうか」
「近い未来がどうとかいう雑誌だ。在庫あるんだろ、最後まで探せよ」
ああ、ついにきたか。『月刊近未来』の「在庫1」はお客さんの予約品だ。
「大変申し訳ございません。今、上がっている在庫はお客様のご予約品でして」
「そんなこと知るかよ。あるなら出せよ!」
引き下がる気配は全くない。参ったなあ、客注伝票を見せるわけにいかないし。
どう対応すべきか考えていると大福がすっと前に出た。
「今はおねんねにゃ」
「……おねんね?」
「もうすぐ旅立つから寝てるんにゃ。まだうちにはいるにゃ」
「この店にいるってことか」
「数に入るのは仕方ないことにゃ。大福たちは寝てても出勤扱いにゃ」
「そりゃ大変だな。いや、楽でいいのか」
男性の声色が落ち着いてきた。大福はぶつくさと言っていたが男性は「じゃあ仕方ねえな」と言い残して店を出ていった。男性と入れ違いに清水くんが戻ってくる。
「棚の前で白玉一号に怒鳴ってたんで戻ってきたんですが、大丈夫でしたか」
「大福がうまく流してくれたよ」
ありがとう、と頭をなでると大福は気持ちよさそうな顔をした。
「アプリと連動させて『在庫僅少』の音声が流せるよう改良します」
「よろしくお願いします」
どのみち僕らは怒られていたのだから白玉一号のせいじゃない。大福がいてくれて助かったと心底思った。
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