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翌日も白玉一号は大活躍だった。高校生が小屋に群がって白玉一号に話しかけている。
「マジやべー。めっちゃ案内するじゃん」
「途中で離れても気づかず棚まで行くとかマジウケるんですけど」
誉めてるのかけなしているのかよくわからないが、その内の一人が「キンショーって何?」と首を傾げた。
「何言ってんの?」
「ねこロボットが『ザイコキンショー』って言ってんだもん」
「ばっかじゃねーの、キンショーつったら」
何か考えるような顔をしたが、僕の肩を叩いた。
「店員さん、キンショーって何?」
「とても少ないということです」
「あるの? ないの?」
「あるかもしれないし、ないかもしれません」
「どっちだよ~教えろよ白玉~」
彼は白玉一号に寄りかかった。なんだかもう友達みたいだ。
「『ドッチダヨ』、検索デキマセンデシタ」
「何コイツまじサイコー!」
真面目に答えた白玉一号に彼らは歓喜した。何か探してたんじゃないのかなあ。
「あの、検索が終了したら戻してもらえますか?」
「マンガ探してたんだった。店員さん、アオサツの新刊どこ?」
「完売いたしました」
「マジかよー」
高校生は騒ぎながら去っていった。大人気コミック『蒼の殺刀』の最新刊は昨日売り切ってしまった。「在庫僅少」なのは多分リフター(万引き)にあったからだと店長は言っていた。
「すみません。僅少は『残りわずか』に変えてみますがリフターにあったコミックのズレはどうにも」
清水くんが頭を抱えている。僕らがどれだけ手を尽くしてもリフターの手を完全に止めるのは難しいことだ。
「店長がフロアの仕様上、仕方ないって言ってたから清水くんは気にしないで。高校生たち、白玉一号が気に入ったみたいだね」
「そうでしょうか」
案内を始めた白玉一号にまた高校生がついていく。止めるべきなのか、ほっといていいのか。
書棚の上で寝ていた大福がフロアに降りた。お客さんの足元をすり抜けて白玉一号を追いかけていく。
嫌な予感しかしない。僕もあとを追うと大福は白玉一号の進路を阻んだ。目の中に搭載されたセンサーが大福を照らす。
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