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翌々日、店長が苦い顔つきで会議から戻ってきた。
「白玉一号は使用禁止となりました!」
先日のことがあったからなのか。僕が冷汗をかいていると店長はデスクに紙切れを落とした。
「電気代、小屋だけで一カ月で百万円! 使うなら自費で出せってさ」
店長は「せっかくアプリと連動させたのに!」と大げさな泣き真似をした。金額を見た清水くんは顔面蒼白になっている。
「アルバイトの僕にはとても……」
「わかってるよ、白玉一号は小屋で待機だ」
店長命令で白玉一号は小屋住まいとなった。検索はするが出動はしない。心なしかホッとしたような、寂しいような気持ちになった。
***
週明けの夕方、清水くんが息を切らして出勤した。
「作ってきました! 超省エネタイプの『黒蜜二号』です!」
彼は勢いよく黒いボディのねこロボットを突き出した。白玉一号より小型で足元のローラーも少なくなっている。
「今度こそ活躍するはずです。店長はどこですか!」
「フェアの品出しに行ってるけど」
すぐさま清水くんは駆けていった。彼はもうすぐ店を辞める。寂しいけど黒蜜二号がいれば時々メンテに来たりして会えるかな。
大福は白玉一号の小屋で寝ていた。わずかだけれど放熱していてあったかいらしい。
「大福、帰るよ」
「寒いからいやんにゃ」
「じゃあ置いてくよ」
「いやんにゃー」
大福が僕の顔にしがみつくと、視界の隅に走行する黒蜜二号が見えた。清水くんがじっと見つめている。
僕と大福がいるから大丈夫だよ、いや大福がいるからね、と声をかけたくなった。
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