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♥自己紹介の時間♥
「それじゃあ、これから順番に自己紹介をしてもらおうと思うから。じゃー、1番の一ノ宮からお願いな〜」
入学式が終わって私達は教室に戻ってきていた。
そして教室に帰るなり、担任の松村先生が提案した。
その瞬間私は、「始まったか…」と心の中で激しく動揺した。
そう。私は、『最初は人見知りが発動するが、慣れてくると普通に戻るタイプ』であった。
だから、数年に一度ある自己紹介という場がとても辛いのだった。
最初はナナちゃんから気さくに話しかけてきてくれたからよかったものの、クラスのみんなの前では緊張してしまうのだ。
「一ノ宮優って言います。よろしくお願いします」
………
えっ、もう終わり⁉︎
そのドライ過ぎる自己紹介に先生も驚いている。
勿論、私も。
ただ、こんなのでいいんだったらいいや!と思ったのも束の間、先生から「あー、次から名前と好きなものと一言ぐらいお願いなぁ」と言われて、ガクッとなる。
そして段々と自己紹介が終わっていき遂に私の番になった。
「えっと…はじめまして。渡辺風和花です。好きなものは〜…か、可愛いものが好きです。よろしくお願いします」
最後の方は声が小さくなってしまった。
もっと気の利いたこととか言えたらいいんだろうけど、無理‼︎言われた事を言うだけで精一杯…。
ま、まぁ?これが全てじゃないんだし‼︎うん!気にしない気にしないっと!
と、自分に言い聞かせる。
「それじゃあ次は、委員長を決めていくからな。男女1人ずつで頼むなぁ」
ざわめく教室内。
みんな口々に「誰にするか」「自分は面倒くさいのはごめんだ」などと言っている。
「それじゃあ、立候補してくれー。推薦でもいいぞー」
絶対にやらない!面倒くさいのは私だってごめんだ。
「よしじゃあ男子で誰かやってくれないかー?」
でも誰も手を上げない、それどころか先生から目を逸らしていく男子生徒達。
「じゃあ誰もやりそうにないので俺がやります」
驚いた。自分から進んでやりたいって言う人がいるなんて。でも口振りや態度、目線から誰もやらないなら仕方なく…って感じだ。
「それじゃあ次に女子を決めていきたいんだがやってくれる人はいるかー?」
絶対やりたくないなー。でもまぁやることもないかーなんてのほほんと考えていると
「はいはーい!渡辺さんとかいいと思いまーす!見るからに真面目だし!」
えええっっっ⁉︎な、何よそれ!嫌だよ‼︎
「やってくれるかな?渡辺さん」
ええ…嫌だよ…。嫌だけど…ここで断ったら…今後、クラスでの立場や周りからの目が…。
「あ………え、っと…」
そう思うと、断りの言葉が出てこなかった。
「………分かり、ました…。やります」
クラスの空気がホッとした事に気づいた。
それに先生だって、面倒くさくなっただけでしょ…。
なんて心の中で異を唱えても仕方がない。これが言えたら苦労はしないのだろう。
でも私にはそんな勇気はない。
私の1番嫌いな所。
直したい所。
でも、直せない所。
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