あの日であった王子様にまた会いたいです!#2

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ピピピピッ ピピピピッ 聴き慣れた音に私は目が覚めた。 あの花火大会から、早9年が過ぎ去り、私は15歳になっていた。 でも、私はあの王子様のことを一時も忘れたことはなかった。 私の初恋。 それは私にとって大きな意味があった。 だって今まで生きてきて男子に好意を持ったことなどゆー君以外にはなかったから。 だから、そんな私の心を射止めたゆー君は私にとっては運命の王子様にしか見えなかったのだ。 そんな私も今日は高校の入学式。 高校の入試の結果は第二位の結果に終わってしまった。 小中では毎回学年1位だったのでどんな人なのか気になるな…。 なんてそんなたわいもないことを思いながら学校に行く準備をする。 初めて高校の制服に腕を通す。 そして、必ず付けるピンクのお花がついたヘアゴム。 これは私のトレードマークと言っても過言ではない。 あの花火大会でゆー君が私にくれた大切なヘアゴム。 私はそれを小学生の頃からつけて過ごしていた。お風呂と寝る時以外いつも一緒に過ごしたヘアゴム。 コレをつけていればゆー君に会った時もきっと分かってもらえる…と言ってもお花は小さいから目立たないんだけどね。682e43fd-f762-4db6-a31b-51af06ce7f09 「風和花〜、ご飯〜!」 「あ、はーい!今行きまーす!」 もう一度鏡を確認。 服よし! 髪よし! 乱れなし! ヘアゴムもちゃんと付けた! OK!じゃあ、ご飯食べに行こう! 今日の朝ごはんはお母さんが作ってくれた絶品のスクランバアルエッグに食パン。どれも美味しそうでぐー、とお腹が鳴った。 「いただきます」 私とお母さんとお父さんとお兄ちゃん。 みんなで机を囲んでご飯を食べる。 「入学式、行くからね」 とお母さんがワクワクしたような表情で言ってくる。 お父さんは仕事の都合上、どうしても抜け出せないらしかった。 そして、満腹になったところで家を出る時間になった。 「行ってきまーす!」 と元気に挨拶をして家を出る。 するとすぐにお兄ちゃんが飛び出してくる。 「風和花〜‼︎なんで置いていくんだよぉ〜‼︎待てよ〜!一緒に行こう!」 そう。何を隠そうお兄ちゃんは世間で言うところのシスコン(※1)と呼ばれるものだ。 「あー、ごめんね。お兄ちゃん。高校ワクワクしてて…。えへへ、ごめんね」 「………あー、もう!俺の妹、可愛すぎる!天使!天使か⁉︎」 「あー、はいはい」 とまぁ、これが毎日。 正直言ってとてつもなく疲れる。 でもお兄ちゃんは妹がそんな事を思っているなんて思ってもいないんだろうな。 「あー、でも心配だなぁ。俺の風和花が通う学校って共学の高校だろ?変な男が風和花の事見ると思うと…。あー!お兄ちゃん、ストレスでハゲそうだよ⁉︎」 「はいはい。ハゲないでねー」 なんて、適当にあしらう。 2人でそんなやりとりをしていると、近所の方が「今日も仲良しだね〜」なんて言ってくれる。 そんな事をずっと繰り返しているうちに学校が見えてきた。 私は足を止めて、私はお兄ちゃんにずっとお願いしたいと思っていた事を言う。 「お兄ちゃん、お願い聞いてほしいんだけどいい?」 「うん?なんだ?お兄ちゃんが何でも叶えてやるぞ!」 「ありがとう。あのね、送ってもらうのはここまででいいよ」 あからさまにカチーンと固まるお兄ちゃん。 するとお兄ちゃんは慌てながらなんでなんで⁉と聞いてきた。 「えーっと…、理由は内緒なんだけど、ここまででいいから!」 「嫌だ!ちゃんと理由を教えてくれよ〜!」 と大学生なのに半泣きで駄々をこねてくる。 ここまでは想定済みだ。だから、この一言を言ってお兄ちゃんを黙らせる。 「お兄ちゃん!お願い聞いてくれなきゃ、もう一緒に登校してあげないよ⁉︎」 するとお兄ちゃんは顔を真っ青にして1人でぶつぶつと呟き始めた。 そして、観念したのか、それとも脅し文句が効いたのかは分からないけど、分かった…と小さく呟いて、すごすごと大学の方向、来た道を戻って行った。 お兄ちゃんは小中の頃からずっと一緒に登校している。そこまでは百歩譲ってまだいいとして、毎回毎回学校の前で抱き着いてくるのだ。そんなシーンを見られれば、『渡辺風和花の兄は重度のシスコン』と周りに知られてしまうかもしれない。入学初日からそんなこと知られるなんて何としても防がなきゃいけない…! そして私は、私が今日から3年間通う高校『嵐ヶ丘高校』に足を踏み入れた。 ※1…シスターコンプレックス
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