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「終わったぁー!」  猫塚くんが伸びをしながら快哉(かいさい)の声を上げる。  社内のクラウドサーバに保存し、ついでにプリントアウトまで済ませた。  エロサイトの巡回とセクハラメールの送信は出来ても、社内クラウドの操作その他はおぼつかない係長(むのう)のために特別サービスである。 「あー、なんか終わったら腹減って来ましたね。メシ行きましょうよメシ。なんか肉食いたいっす」  気付けば日付が変わる寸前だ。駅前の立ち食いステーキ屋は既に閉店している。  ハンバーガーか牛丼かと考え始めて思い出した。  終電、逃しちゃった。   「おれの家、泊りに来てくださいよ。ここから歩いて10分かからないんです。狭くて――あと、ちょっと散らかってますけど。ちょっとだけですから」    いいなぁ、近くて。  ちなみにわたしが同居人と暮らす家は、電車と歩きの合計でだいたい1時間弱だ。  タクシーを使えば30分くらい。深夜料金となればそれなりの額になる。    食事を終えて家に着く頃には、どんなに早くても午前1時半を過ぎてしまう。  明日の仕事に備えて――今は考えたくもないが――早く寝たい欲求が勝った。  そんな訳で、コーヒーに引き続いて厚意に甘えさせていただくことにした。   **********    歩くこと7、8分で、猫塚くんの家に着いた。  途中で食事をしたので時間がかかって、今は0時40分くらいか。   「自分ちだと思ってくつろいでくださいね。ちょっと散らかっちゃってますが」  なんかさっきから散らかっているのを強調しているなぁと思いながらも、彼に続いてドアの中に入る。    玄関を上がってすぐ、彼が何を気にしているのか理解できた。    廊下にはパンパンに詰まったゴミ袋が幾つか転がっている。床には脱ぎ散らかされたまま散らばった服。  ミニキッチンのIHヒーターの上には、小さなフライパンが真っ黒焦げのまま乗っかっていて、その横にあるシンクには、食器が積み重なったままになっている。    なんか床にも物がたくさん落ちていて、まっすぐ歩けない。  フローリングの露出しているところを選んで千鳥足で進む。   「とりあえずベッドの上にでも座ってください。あ、上着はハンガーに掛けますんで」  上着を預け、勧められるままにベッドの上に座って部屋を見回す。  ちょっとだけ掃除しようか。 「すんません」  普段から猫背ぎみの背を更に丸めて気まずそうにする猫塚くんを横目に、新しいゴミ袋にコンビニ弁当やスナック菓子の残骸その他を放り込んでゆく。  部屋には物があまり置かれていないおかげで、放り出されたままのゴミを袋に入れ、脱ぎ散らかした服をランドリーバスケットに入れたりハンガーに掛けたりするだけでも、だいぶ変わって見えた。    掃除機を掛ければ完璧だけれど、そこは早い時間に帰れたときにやってもらうしかない。  出来るかな?
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