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「ママを呼んで!」
目の前にうずくまる少女がヒステリックに叫ぶ。
「誰でもいいわ、早くっ」
床をバシバシと叩き、ただ事ではない様子。
俺は思わず、
「大丈夫?」
と声をかけ、少女の肩に触れた。
すると少女は、ビクリと肩を動かし、俺の姿を視界に捉える。
驚いたように見開かれる瞳。それを眺めながら俺は、これが舞台の一部で、この少女は演技をしているだけだということを思い出していた。
俺、田岡茂は、限度を超える羞恥心を感じると5秒だけ過去にタイムスリップしてしまう。しかも、タイムスリップしてから5秒間は全ての記憶を失う、という追加要素もあるため、俺の日常は非常にデンジャラスだ。
薄れゆく意識の中、俺はちょうど10回目のループに突入することを認識する。
今日は何回で終われんだろ、とぼやいた。
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