2007年 春

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「あ、水沢? よろしくね」  今本先生は軽く、私に挨拶してくれた。 「渡瀬と崎山はもう知っとるけど、水沢は初めてなんだよな……」 「水沢さんは今本先生、初めてなの?」  崎山先輩が私に優しく声をかけてくれた。 「はい、お会いするのは今日が初めてで……」 「珍しいねぇ」  崎山先輩は素直に驚いているみたいだった。  やっぱり、何の面識もないのにいきなり今本先生を指名する学生なんて、あまりいないんだろうな……  私以外の2人は、今本先生と既に面識があるみたいだ。今本先生がざっくり大まかに、2人の先輩を私に紹介してくれた。  渡瀬(わたらせ)紘人(ひろと)先輩は、博士課程の新入生。学部と修士は東京藝術(げいじゅつ)大学出身だと言う。  ……なんでわざわざ、藝大(げいだい)から国音(くにおん)に来るの? と思ってしまった。    国音と藝大には、明確にレベルの格差がある。  普通の大学受験、つまり学部の受験でいうと、藝大の(すべ)り止めに国音を選ぶ人がいるという感覚。
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