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人間学の講義の後には、宮下さんと食堂でランチするのが習慣になった。
オーケストラパートを二台ピアノで弾いてほしいと渡瀬先輩にお願いしたら、快くOKしてくれたと宮下さんに話すと、良かったね、と目を細めて喜んでくれた。
話は変わるけど、と宮下さんは前置きして国橋音大の助成制度について話し始めた。
学部生にも、海外で研修を受講する際に、申請すると大学から助成を受けられる制度があると教えてくれた。
「私は声楽だから、イタリアに行こうと思うの。来年、四年の夏休みかな……」
「就職とか……就活しないんですか?」
「うん。私は結婚を約束してる彼もいるし、卒業しても歌を続けるの。ジョイントコンサートやったりとかね。渡瀬君ともいずれ一緒にコンサートやりたいし」
「そうなんですね……彼氏、いいなぁ」
「そうぉ? そんなことないよ。私から見たら、れいちゃんのほうがずっと羨ましい。まだこれからの人生、いくらでも可能性があるじゃない? 私は人生だいたい見えちゃってるから。彼とだって、もう長い付き合いになるし」
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