教養と選択科目

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教養と選択科目

 現代アートの解釈を学ぶ芸術Cの講義は、刺激的で面白い時間だった。  講義初日にスライドでいきなりデュシャンの作品『泉』を見せられ、男性用小便器がポンと置いてあるだけのアートが何を表現しているのかというテーマを挙げられた。私は全く思いつかなかった。  先生の解説を聞いていると、どうやら現代アートにはメッセージ性があるのだな、というのが()に落ちてきた。  デュシャンの『泉』は表現するという行動そのものに対して、疑問を呈しているのではないかという。そういった前提、常識をひっくり返そうとするような問いかけが現代アートの主軸なのかもしれない、と思った。  奇異な現代アートも、そう見ると意外と面白く感じられるから不思議なものだ。  綺麗、美しいといった感性に訴えるのではなく、独自性、面白い切り口……視点で勝負しているとでもいうのだろうか。  芸術Cでも隣に偶然座った女の子とお喋りするようになった。ピアノ科の同級生だった。その子とは、無難で互いに立ち入らないような会話をしていた。
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