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選択科目には語学もあった。
一年次では必修科目の語学のなかで英語を履修しただけで、選択科目では語学を選ばなかった。一年の時から、必修の英語は難しくなく、手応えもあまり感じていなかった。
必修科目の語学は英語だけではなくて、ドイツ語・フランス語・イタリア語からも選べたけれど、私は英語を選んでいた。
二年まで続く必修の語学は、言語の種類は一年で決め、二年では変えられない。二年でも必修の語学は必然的に英語を学ぶことになる。
第二外国語という考え方は、国橋音大にはなかった。
二年生になってから私は、選択科目でドイツ語とフランス語に手を出していた。
渡瀬先輩と今本先生の影響で、ウィーンに興味がめばえていた。ウィーンはオーストリアの首都。オーストリアの公用語、ドイツ語をやってみたくなった。
ドイツ語を勉強することで、渡瀬先輩の世界に少しでも近づきたかったのかもしれない。渡瀬先輩がいる世界にも。渡瀬先輩のなかにある心の世界にも。
フランス語には元々少しだけ興味があった。
講義要項で数ある文学の講義を見た時、フランス文学を選んでみようと思ったのはおそらく、浪人時期に読んだ『悲しみよこんにちは』で描かれていた主人公、少女セシルのコケティッシュな魅力が心に残っていたからだと思う。
内省的だけど罪深いセシルの女性像が新鮮で、フランスって面白いな、と思っていた。
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