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音大のピアノ専攻では、ピアノを師事する先生との個人的な相性が、学生生活を大きく変えてしまう。
武蔵川音大附属高校を卒業したから、そのあたりの想像はだいたいついた。ピアノの担任は、ともすると高校の学級担任よりも日々に及ぼしてくる影響が大きかった。良くも悪くも影響力が大きい存在になる。
武蔵川音大にそのままエスカレーターで進学しなかったのも、音大附属高校でついていたピアノ担任と全然相性が合わなかったことが大きい。
ピアノ担任は、いわゆるクラスの担任の学級担任とは別の先生になる。ピアノ科でない生徒だったら、例えば声楽なら声楽担任になる。
私が口を開くだけで不機嫌になり、質問や希望や相談を一切許さない先生だった。
「黙って言うことを素直に聞き、喜んで指導を受け入れ、疑問など呈さず、先生の演奏を模倣してピアノを弾く」
そういう姿勢をひたすら求めてきた高校のピアノ担任。
「ピアノは語るものじゃありません。聴いて、弾いて、実感することでだんだんと分かってくるものです」
こう諭されたものだった。
ピアノは実感することでだんだんと分かってくる……これはまぁ、確かにそうかもしれない。
でも実際問題として、一対一の個別レッスンなのに生徒側だけが全く喋れないとなると、不安や疑問や抑え込まれた要望が渦巻いていくものだと思う。
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