2007年 春

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 そのまま武蔵川音大に進学すると、ピアノ担任もおそらく変えられない。  本来そういう相談をできるはずの副学長にかけあっても全然分かってくれなくて、「素晴らしい先生ですよ。いい先生です」なんて平然と言われたから、そうなるのは予想がついた。  それが何より苦痛で嫌で、不安で仕方なかった。  高校を卒業した後、私は浪人の(てい)でしばらく休んでいた。  附属高校だったけど、武蔵川音大にはどうしても進みたくなかった。高卒でもいいんじゃないか? とも思った。  でも一年も休むとやっぱり大学には行こうかなと思い、3年の空白をあけて国橋音大を受験していた。  本当なら、大学ではいい先生に師事できるとありがたい。まぁでもとにかく、あの高校から逃れられただけでも本当に良かったと思う。  あのピアノ担任は、嫌いという言葉では到底言い表せない。もう2度と会いたくない。
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