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ゆっくりと立ち上がり俺の横を通り過ぎ様に
「好きよ。でも契約はもう終わりでしょ」
と呟いて車のドアに手をかけ
俺を見た瞳の奥は赤らんで見えた。
「俺、ずっと待ってます。由美さんが戻って来るまで」
「だからいつに…」
「それでも…由美さん以外の…考えられない。だから」
「イタリアの空の下、ワイン造りを学んで…真一さんを思い出したら…ね。夏子さんを助けてあげて」
乾いたドアの音と
泣き声にも似たエンジンの音だけを残し
彼女はイタリアへと旅立った。
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