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ペースに巻き込まれる
利久の母親とは同級生という以外に同じ職場で働く者同士だった。よく知った仲というのもあって非常に気まずい。
「息子が迷惑かけてるみたいでごめんね」
一体、彼女はどこまで知っているのだろうと心臓が飛び出そうになった。
「あぁ、うん、えっと南は利久君に何か聞いているのかなぁ」
「ごめーん、高校の時から知ってる」
「ひぃぃ」
今まで何食わぬ顔で接していたのかと血の気が失せる。
「さすがに未成年のうちではやばいと思ってね、二十歳になるまで我慢しなさいって言っておいたわ。偉いでしょ、私」
自慢気にそう口にする南に河北はがっくりと肩を落とした。そうだった。彼女はこういう人だったと。
「息子が同性のしかも三十も歳の差があるおじさんに恋心を好きとか気にならないの?」
「息子がさ、真剣な顔をして両親に告白したのよ? どれだけ勇気がいったことでしょうね。私は話してくれたことが嬉しかったし、息子が望むなら応援してあげたい。お父さんは渋い顔をしていたけれどね」
自分の子供が同じように告白してきたら自分はどうするだろう。
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