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はじめに。
「マグダラのマリア症候群」
みなさんは「マグダラのマリア」という人物のことをご存知だろうか。
もしかすると、呼び名くらいは耳にしたことがあるのかもしれない。
「マグダラのマリア」とは、新約聖書の福音書に出てくる女性のことだ。
一説によれば、イエス・キリストの妻とされていたり、娼婦だったのではないかなどと言われたりすることもあるようだ。
だが、今のところどれも確証はないらしい。
それなのに彼女は「罪深い女」と呼ばれている。
どういった人物だったのか判然としないにも関わらず、だ。
実に気の毒な話ではないか。
この「マグダラのマリア」の話を聞いて、どうか数千年前の出来事だろうと笑わないでいただきたい。
現代でも「マグダラのマリア」と同じようなことが、あちこちで起こっているのである。
当人に責任がないにも関わらず、どういうわけか悪者にされてしまう──身につまされる人
は少なくないはず。
例えば、胸が大きい女性がそれだ。
CカップやDカップならまだいい。これがEを超えてFやGになると、それはそれはもう大変の極みなのである。
異性からはいやらしい目で見られるのが日常で、顔よりも胸を見られる回数が多いと言っても決して大袈裟じゃない。
電車では、ほとんど乗客がいない空いてる車内にも関わらず、わざわざ隣にやって来て座る輩がいる。
嫌な予感がしていると、案の定、車体の揺れに乗じて肘で突いてくるのだ。
痴漢などと騒ごうものなら「そんなデカイ胸をしているんだから、触られても仕方がないだろ!」と、あたかもこちらが悪いかのように言ってくる阿呆がいるのだからたまらない。
胸が大きいと肩が凝る、走ると左右の胸があちこちに揺れて痛い、谷間に汗疹ができる、かわいい下着が少ない──ただでさえ不都合だけらけだというのに、まったく世の中というものは実に不条理だ。
そして胸の大きな女性にとってもっとも厄介な存在なのが、同性だ。嫉妬が含まれてるぶん、面倒なのである。
淫乱、ふしだら、ホルスタイン、頭が悪そう──
胸の大きな女性が一体何をしたというのだろう。このような仕打ちは前世で相当な意地悪でもされていない限り、辻褄が合わないのではないだろうか。
とにかく平均よりも胸が大きいというだけで、なんとも生きづらいものだ。
他にも愛想が良いだけで「男に媚びている」や、吊り目だと「気が強いはず」、鼻が高いと「絶対に整形してる」など挙げれば枚挙に頭がないのである。
そしてこのような「見た目」や「雰囲気」、あるいは誰かの「きっとこういう人はこうに違いない」といった思い込みに晒されている女性の中には、本来持っている自身の魅力に気がつけないでいるケースが少なくない。
そんな女性たちのことを悲哀や哀愁を込め、私は『マグダラのマリア症候群』と呼びたいのである。
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