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「青を、呼べ」  単語のひとつひとつを噛みしめるようにそう呟くわたしの横には、夏休みにもかかわらずきっちりと制服を着ている3年2組の全員が立っている。灰色になってしまった朝の海を前に、誰も口を開くことは無かった。テトラポットを見下ろす塀の上で全員が海を見つめたまま動かない。それぞれが隣の者と手を繋ぎ合い、ひとつになる。わたしたちで小さなこの町を、大きなこの世界を、なんとかできたら。でも、もし。そう考えると途端に不安になって怖くなる。もし何も変わらなかったら。もし、ずっとこのままだったら。ぎゅっと手に力が入るのはわたしだけではなかった。隣の莉茉(りま)の手も同様に力が入り震えている。きっと、みんなも同じだった。こんな未曾有の出来事を目前にして、わたしたちになにができるのか、何一つ分からない中での決断だった。ただ、失った色を取り戻したい、それだけを想って今わたしたちはここにいる。取り戻さなきゃいけない。呼び戻さなきゃいけない。わたしたちの、色を──
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