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「クスリマスのことかの?」
「なるほど!クリクリマスなぁ、花凛ちゃんもお年頃だから」
苦いのか甘いのかわからないクリスマスに、花凛ちゃんは思わず吹き出した。
おじいちゃん、おばあちゃんは横文字が苦手なのだ。
「ウフフ。おじいちゃん、おばあちゃんとお話しているとぉ、花凛は元気がでるかな~」
鈍感な恵介の事はもう放っておいて、授業に集中する花凛ちゃんだった。
放課後、スマートフォンに恵介からメールが届いていた。
《花凛、急な出張!クリスマスには戻るよ》
今日は12月23日、明日のイブは学園の終業式だ。
「つまりイブは帰れなくて、クリスマス当日に帰ってくる……もう、いいや」
甘いクリスマスイブなど、とうに諦めていた。
今年も花凛ちゃんの部屋で、地味ながらもしみじみとクリスマスを過ごす──そんな底辺のクリスマスイブさえも叶わないのだ。
あからさまにションボリとスマホ画面を見ているから、先生達もなんて声をかけていいかわからない。
──恵介がまたやらかした。
──まさか、ドタキャン?
──長山先生、痛々しい……。
「あれっ?どうしたのです、長山先生。明日は終業式でイブですね~1年などあっという間──」
空気を読まない山崎は、黒木先生に絞め技を掛けられ白目を剥いた。
「みなさん……気を遣っていただかなくても、花凛は大丈夫ですから」
──長山先生の語尾が伸びない!これはかなり怒っているかも!
無表情な花凛ちゃん、無表情に挨拶し、無表情に帰って行った。
どこを歩いてもクリスマス一色で、カップルばかり目に入る。
気の早い事だ。
「予約したケーキ、一人で食べちゃおうかな」
クリスマスチキンにシチュー、ささやかなオードブルと恵介が好きなワイン。
なんだかんだ言いながら、ウキウキと準備してしまう。
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