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心を読めばわかるのだが、今はあえてそうしたくはない。
丸山先生は我慢強く待っていた。
夕食に、勇太の好きなごった煮がでた。
野菜もこんにゃくも、何でも甘辛く煮込むからごった煮。
ばあちゃんの時短料理らしい。
「旨い!ご飯がススム君だ!」
上機嫌な勇太を肴に、じいちゃん達もお酒がススム君だ。
「じいちゃん……」
「何だぁ?酒か~勇太」
「週末、忙しいか?」
じいちゃん達はキョトンとしている。
「土日、姥桜学園祭だろ?たまには村を出て、見に来てくれ……よ」
口元に掲げていたコップ酒を、じいちゃんが畳に置いた。
「そうか、そうか。もちろん、見に行こう!勇太の晴れ姿をな」
ばあちゃん軍団もにじり寄って来た。
「ばあちゃん、来てくれよ!色々な食べ物があるんだ!」
「よし、よし!勇太にデッカイ弁当持たせてやる。ばあちゃん、おめかしして行くからなぁ」
久しぶりに見た、勇太の嬉しそうな顔。
じいちゃんばあちゃんを、姥桜学園祭に誘いたかったようだ。
幼い子供が、参観日に来てくれる母や父を誇らしげに振り向くように、勇太もじいちゃんばあちゃんに甘えているのかもしれない。
──甘えさせてくれる人も大切です。
じいちゃんばあちゃん達と約束をした勇太は、満更でもないような顔でご飯をおかわりしている。
丸山先生は、少しづつ変化していく勇太をさらに大きな愛で包み込む。
村のじいちゃんばあちゃん達総勢27名。
うち、姥桜学園まで元気に移動出来るツワモノは10名くらいか。
「勇太、どうしても足が悪いじいちゃんばあちゃん達はお留守番になります。是非、お土産を〜アハアハ」
気恥ずかしいのか返事はなかったが、この日の夜、勇太は遅くまでゴソゴソとなにかを作っていた。
知らないふりの丸山先生は、頷きながら眠りにおちた。
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