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髪に桜の花びらを絡ませたまま、室井真姫は自転車を立ち漕ぎする。
春の夕暮れは、お気に入りのスイーツをたらふく食べた後のように少し気だるく甘い。
そんな雰囲気を切り裂くように室井は疾走する。
──なんでこうなるのかなっ!私の馬鹿、馬鹿!馬鹿ーーーー!
待ちにまった新学期、姥桜学園の1年が始まる。
クラスも持ち上がり、担任は山崎一、元X先生だ。
室井をはじめ深紅の薔薇クラスは、これから再び始まる学園生活に思いを馳せ、山崎の登場を待っていた。
教室は今日もかしましい。
20人になった深紅の薔薇クラスだが、パワーダウンどころかパワーアップの予感がする。
「おはようございます!」
溌剌と山崎が教室に入って来ると、あちこちから野次が飛ぶ。
──山崎先生お腹ヤバイんじゃないのー?
──そんなんじゃ彼女できないし!
──てか、髪増えてない?
──やだ……やった?ひそかにやったの?
言いたい放題の薔薇乙女達だが、その顔は嬉しさでだらしなく緩んでいる。
山崎の着ている赤いジャージに反応しているからだ。
卒業式にプレゼントした赤いジャージは、山崎にとても良く似合っていた。
「アハハ!少し太ったのは当たりです。髪は昨日軽くパーマを……」
「色気づくのはまだ早いよ?深紅の薔薇クラスが山崎先生の一番なんだからね!」
「ほんとソレ。どうせ花凛ちゃんに似合ってますぅ〜山崎先生素敵〜とか言われて、ニヤニヤと鼻の下を伸ばしてたのがオチよね?」
全くその通りだった山崎は、冷たい汗が背中を流れる。
ついさっき長山先生からそう言われたのだった。
「相変わらず厳しいですね。もちろん僕にとって、この深紅の薔薇クラスが一番なのは変わりませんから」
山崎がしみじみとそう言えば、さすがの薔薇乙女達も満足気に頷く。
静かになった教室を見回し、山崎が澄ました様子で教室の入口に声をかける。
「お待たせしました。入って下さい」
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