美しくあれ#lily

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どのクラスも、放課後を使って準備に余念がない。 薔薇乙女達も、地元商店街だけでなく、色々な商店街を歩き、食べ、参考にしたかった。 時間がないのだ、悲しいくらい。 「悔しい……可愛らしさなんかに拘って、時間を無駄にしていた頃に戻りたい」 学祭隊長の脇田でさえ、たこ焼きだ、ドレスだと言い争っていた時間を呪っている。 「見に行きゃいーじゃんか。土日とかに」 お気軽勇太に、刺すような視線が集まった。 「あのね勇太。私達は主婦なの。アンタと違って主婦業に土日なんて関係ないのよっ!」 「溜まった洗濯や洗い物、アイロンがけとか、アンタした事ある?ないよね、まったくねー」 乙女達の口撃は、勇太を庇う漢にも波及していく。 ──勇太……こんな時は、ひたすら嵐が去って行くまで我慢するんだ。 ──口答えは絶対、いけないよ? 「でもよー……」 「なんですってーー!!」 ──勇太……だから言ったのに。 薔薇クラスの漢達は、このあとコテンパンにやられてしまった。 「そうね、私達が忙しいなら、漢組が行って来てよ」 風向きが変わった。 「写真でも撮って来てくれたら、ますます斬新なアイデアが浮かぶかもだし」 男女共学になった姥桜学園だが、男子生徒はどのクラスも圧倒的に不利だ。 多数決で勝てた試しがないからだ。 「また多数決かよっ!卑怯だぞ、偽乙女!」 「うるさいよ、勇太!どこが偽乙女なのさ!」 こうして薔薇漢プラス勇太は、土日の休日を使って商店街巡りをする事になった。 噂は秒で広まる。 他のクラスの漢達も、薔薇クラスに右にならえで巡り隊に任命された。 「クッソー!暴君ババアがっ!何が主婦に土日はないだよ。押し付けやがって!」 憤慨する勇太だが、漢達は慣れている。
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