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「いいじゃないか勇太。良い課外授業になるかも。そうだ!山崎先生や丸山先生も誘ってみよう!」
週末、漢達の遠足が開催される。
「ほう、ほう。商店街巡りとな?姥桜学園は楽しい事を考えるのう」
夕食時、じいちゃん達がフォッフォと笑う中、勇太はしかめっ面だ。
「そんな顔するな、勇太。ばあちゃんが弁当を持たせてやるからなぁ、機嫌直せ」
「弁当はいいよ。殿じい達と大人ランチするらしいから」
ばあちゃんは聞こえているのかいないのか、ニコニコ笑って勇太を見ている。
「なぁー……じいちゃんとばあちゃん達さ……」
言いにくそうな勇太に、がぶり寄るじいちゃんばあちゃん。
「はあ〜?なんだって勇太?」
「ウワッ!!近い、近いよじいちゃん!酒臭いし!」
勇太は何を言いかけたのだろうか。
丸山先生にもわからなかった。
「いってらっしゃ~い、勇太、太〜。お早うお帰り〜」
村のじいちゃんばあちゃんに見送られ、肩に食い込むパンパンのリュックを背負う二人は、バス停ですでに汗ばんでいた。
お弁当を作らない代わりに、殿じいや井手や高田へのお土産が、ぎっしりとリュックに詰まっている。
「これで商店街を歩かされたらたまんねー……」
「じいちゃんばあちゃんの愛ですよ?勇太、fight」
寝食を共にするじいちゃんばあちゃん達には、随分と心を許して来はじめた勇太。
じいちゃんばあちゃん達を怒らせると、違う意味で厄介だ。
酒を飲まされる、昔話が永遠に繰り返される。
けれどもじいちゃんばあちゃん達は優しい。
叱られてもやっぱり優しい。
そして、時々心配になる。
じいちゃんばあちゃん達がいつまで元気に笑っていてくれるのだろうかと。
また、自分の手からすり抜けていくのではないかと。
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