美しくあれ#lily

10/12
前へ
/323ページ
次へ
今日は二つの商店街を巡る予定だ。 ひとつ目の商店街は、昔ながらの商店街だが、商店街を抜けると神社があり、参拝客を見越したお店が立ち並んでいた。 「シャッターが閉まっているお店が少ない。嬉しくなってしまいますね」 井手は早速、写真を撮りだした。 「お正月やお祭りには、参拝客で賑わうからかな?わりと食べ物屋さんが多いですね」 山崎が指差したのは老舗の蕎麦屋、丸山先生も小さなカフェを覗いている。 パン屋もあり、タピオカドリンクのお店に若者が並んでいる。 横道にそれると、布団屋があった。 居酒屋も何軒かあるようだ。 「あそこは何でしょうか?」 若い女性が出たり入ったり、かなり賑わっていた。 『ニャン吉のお家』 「ウワッ、猫グッズがいっぱいですね!」 「僕らは入りにくいな~、勇太、リサーチ頼む」 「何で俺?」 まぁまぁまぁと丸め込まれ、丸山先生と一緒に入ってみれば、猫耳の店員が近寄って来た。 「いらっしゃいませ~、ごゆっくりどうぞ〜」 「あ、ああ、あのっ!このお店って、昔から猫の……」 「違うと思いますよ~。前はね、鞄とかのお店だったみたい」 ニャン!と、聞こえてきそうなポーズをキメた店員さんは、カウンターに戻って行った。 「猫耳の店員だった……薔薇ババア達が好きそう……」 「このことは黙っておきましょう。マーメイドカフェの衣装が、恐ろしい事になりそうだから」 漢達は猫グッズのお店を封印する事にした。 地元の商店街とは違って、コロッケや惣菜を売るお店はなかった。 和菓子屋と、お豆腐専門店。 珍しい所では、小さな本屋さんがあり、販売だけでなく貸本までやっていた。 「勇太は知らないでしょうねー、僕達は貸本にはお世話になったなぁ」 「青春時代ですね。きっと、買ったりもしていたはずなのに、貸本の思い出の方が強く残っている」
/323ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加