唇に愛を#lip

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脇田が教壇に立つと同時に、廊下から賑やかな嬌声が聞こえてきた。 そして、ヒールが床を叩く音が重なりながら近づいて、とうとう教室のドアが勢いよく開いた。 「グッモーニン、薔薇乙女ちゃん達〜」 「ごめんご、朝が弱くて遅くなっちゃったぁ」 一日の勉学が終わり、達成感が漂う清冽な教室に、真逆の珍客が次々と入って来る。 一番最後には、常盤社長が両手に花よろしく入って来た。 脇田が喜び勇んで迎えると、艶やかなドレス姿のお姉さま達は勝手気儘に教室を練り歩き出した。 「みんな、竜宮城を営業するにあたって強力な助っ人をおねがいしたの。お姉さまクラブ『ドドール』の売れっ子現役ホステスさんよ!」 「マリリンよ、よろしくねん」 「あたしはリリィ。仲良くしてね~」 「私はアイリス。お店ナンバーワンなの。ウフ!」 マーガレット、ローズ、サリー、ここまではまだ許そう。 「あたし?ドリアン!まだまだ半人前やけど、未来のナンバーワンはあたし!」 ドリアンの強気発言は、野太い罵声にかき消される。 「ワレ、調子こいだらちゃーっすぞ!」 「引っ込んどれ、半熟ドリアン!」 呆気にとられるなどかわいいもので、薔薇乙女達も教育委員会も呆然としている。 若松教育長は、だらしなく口を開け──よだれまで垂らしていた。 「ほらほら、喧嘩しない!お姉さま達は、私達の先生なんだから!」 脇田の爆弾発言に、教室が揺れるほど雄叫びが起こる。 「そうだった!ごめんご、薔薇乙女ちゃん。で、私達に弟子入りしたいのん?」 井手、高田がガタンと立ち上がる。 勇太は殿じいに引っ張りあげられ、ささやかな抵抗を見せている。 「あら、みんな良い感じ!私達に任せて?一流は無理でも、そこそこのクオリティに仕上げてあ・げ・る」
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