唇に愛を#lip

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姥桜学園祭前日は、昨年よりも念入りに準備が進められている。 姥桜学園全体が商店街で、ワクワクするような出来栄えだった。 地獄に仏クラスも、玄関に飾る大きなアレンジメントを1対仕上げた。 学園の庭で育てられた花々が、戸塚のセンスで優しい花籠のアレンジメントになる。 夕方から運び込まれたユリや薔薇の花を、今からゴージャスな花輪に変身させる。 戸塚の指示にそって、永慶先生と丸山先生が作って行くのだ。 「てっぺんにユリな、まわりにかすみ草散らして──」 「このくらいでしょうか?」 丸山先生は他の生徒と、花を長持ちさせるひと手間を施している。 地獄に仏クラスには、時間がまだたっぷりある。 夜だろうが、朝になろうが関係ないのだから。 薔薇クラスは、竜宮城最終確認に入っていた。 土日ともに、午後4時~6時までの花屋は、クラスの半分が午後2時には花の切り出しをし、ラッピング作業に入らなければ間に合わない。 「小さい花束に、リボン忘れないでよ?赤と青ね!」 「可愛らしくお願い!庭のお花全部だからね!配分考えてね!」 「ちょっと、ちょっと!麒麟カンパニーからお花の追加がトラックで運ばれて来たみたい!さっすが円谷社長……ロマンチックよね~」 麒麟カンパニーの中庭で咲いている花々が、トラックで運ばれて来た。 図書室の神崎さんが育てた、珍しい外国の花もある。 誰もいなくなった廊下を、理事長が静かに歩いていた。 すっかり様変わりした各々の教室が、今か今かと待ちわびている。 「おっ?理事長ー!戸締まりご苦労。わたしらもパトロールしようか?デヘデヘ」 「あなた達こそお疲れさま。準備は整いましたか?」 自慢げに理事長を北の教室に連れて行き、出来上がった花のアレンジメントを見せる。 「これは……見事です」 明日は姥桜学園祭。 何が起きるかわからない。
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