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姥桜学園の正門には、1対の見事な花籠が飾られてある。
学園祭に訪れた人達は皆立ち止まり、そっと花に触れたり、写真を撮ったりしている。
その様子を、地獄に仏クラスの戸塚は、瞬きもせずじっと見つめていた。
瞬きすると、長いこと忘れていた涙というものが溢れてきそうだから。
他の仏クラス生徒は、永慶先生とパトロールを開始する。
──ゆっくり眺めていなさい、戸塚さん。気の済むまで。
花籠が出迎える正門をくぐると、校舎まではアーケードになっていて、姥桜学園の園芸部、美術部、写真部の露店スタイルのお店が待ち構えていた。
園芸部の八百屋さんには、地域主婦層が朝から猛獣の突進だ。
エコバッグ片手に、新鮮野菜に群がる。
それを捌くのは、姥桜学園スポンサー空蝉の宿から派遣された、火車ローランドごろうだ。
「モーニン、美しい奥様方。あ、私のスィートハニーあやちゃんには敵いませんが。そう、今年もこの火車ローランドごろうが売りに売る、新鮮野菜を見てちょうだい。キュウリは曲って一人前。人間も腰が曲って一人前。まっすぐなキュウリなど、自然をなめている証拠。あ、奥さん、あくびはダメですよ、傷つきます……」
昨年よりもパワーアップしたごろう君、あやちゃんとの再会を前に、テンションは爆上がりのようだ。
キュウリ、ナス、カボチャ、大葉に葱、じゃがいも、さつまいももゴーロゴロウ。
隣には美術部の雑貨屋さんだ。
美術部員渾身の栞、ブックカバー、エコバッグ、紙袋。
描かれている絵はすべて、部員の力作ぞろい。
植木鉢カバーなどは、飛ぶように売れてしまった。
そしてメインは、プリントTシャツだ。
木嶋珠絵がこだわり抜いたデザインは、親子ペアで着れるすぐれものだ。
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