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薔薇クラスで、パンケーキを焼いていた勇太は、チラチラと入口ばかり見ていた。
次々と入る注文に、勇太と漢達は奮闘する。
「ラブって……無理だよ、書けねーよ」
「お客さんの要望です。ほら、こんな感じで──ラブです!」
殿じいがパンケーキに、チョコでラブと書いた。
カップルの要望だ。
「クソっ!ラブとか、食ったら同じだろ!」
ほぼ満席の店内に、デッカイ声が響く。
「勇太~来たぞ~」
「勇太、ばあちゃんの差し入れだぁ」
「勇太はどこだ〜?」
ようやく村のじいちゃんばあちゃんが到着した。
勇太は慌てて駆け寄った。
「じいちゃん、ばあちゃん!疲れてないか?転ばなかったか?」
「フォッフォ!元気満タンじゃあ」
超高齢のお出ましに、パンケーキを食べている人も、食べ終わった人も、じいちゃんばあちゃんに席を譲ってくれた。
「パンケーキとやらをたのむ!」
勇太はいそいそとパンケーキを焼き出した。
あんなに嫌がっていたラブの文字を、チョコと生クリームで書いていく。
勇太のうれしはずかし愛情パンケーキの出来上がりだ。
「喉、詰めんなよ?ゲッ!パンケーキに緑茶って……まぁ良いけどさ」
──勇太、午後2時まではおじいちゃん、おばあちゃん達を案内してあげたら?焼くのは我ら漢組に任せて。
「いいのかよ……忙しいのにさ」
「良いに決まってるでしょ、勇太!その代わり竜宮城の時はよろしく!」
脇田がウィンクすると、勇太からマーメイドエプロンをみんなが剥ぎ取る。
「あり……がと」
勇太は嬉しそうに、じいちゃん達と一緒に座った。
「勇太もあんな顔するんだー。いつも素直ならかわいいのに」
「ホントだ。まだまだ甘えん坊よね、勇太は」
からかいながらも薔薇乙女、とっても嬉しそうな表情だが、こちらも勇太に負けないくらい天の邪鬼だ。
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