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井手は意外と似合っている。
舞妓姿で乙姫様のようだ。
高田は、チャイナドレスに大胆なスリットが艶やかさを出している。
ストレート黒髪ウィッグに、最近の髪の毛問題から開放され、やたら髪を嬉しそうに弄っている。
1番若い勇太。
いかようにもイジれると、ドリアンがノリノリで仕上げた。
純白のウェディングドレス姿は、神々しさを放っている。
「一生に一度の思い出よん、勇太ス・テ・キ」
問題は若松教育長だ。
何を着せても似合わない。
「着物だ、着物!華しゃんみたいに仕上げてくれ」
悪代官……。
「ドレスなら、黒だ!神秘的だろ?」
葬式か……。
「チッ。ならば──」
「おだまりっ!あんたにはほとほと手を焼かされるわ~。目だけ出しときなさい!アラブの女性でいくしかないわ!」
つけまつげでギョロギョロした目だけの若松教育長。
しかし、落ち着くところに落ち着いたようだ。
お疲れ様なドドールのお姉さま方、自分達も支度を始める。
「いい?日頃お世話になっている地域の皆様に、余すことなく手渡してね?もちろん、感謝の言葉を忘れないで?」
脇田がひとりひとりに確認して回る。
ドドールのお姉さま方は、竜宮城で花を手渡すが、勇太一同は学園をしゃなりしゃなりと歩き回る。
2時間だけの現代版、花魁道中。
去年の体育祭で使った塗り輿に乗るのは、薔薇クラス担任山崎一だ。
別室にて見事な花魁に変身し、静かに待機していた。
パンケーキが売り切れる頃、お店は徐々に変化する。
ドドールの店内に似せる事はできなかったが、妖しく、艷やかな店内へと変わっていく。
香りさえ、夜の香り。
チラチラと見え出すのは、夜の香りを纏う美しき蝶達。
今回は海底を彩る、熱帯魚だろうか。
花魁道中が静かに始まろうとしていた。
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