18人が本棚に入れています
本棚に追加
「楽しかったよね」
もう一度スマートフォンをチェックする。
「仕事、忙しいのかな」
花凛ちゃんは、スマートフォンを握りしめたまま、ソファーでウトウト眠ってしまった。
「んん……」
カーテンの隙間から明るい日差しがうかがえて、花凛ちゃんは飛び起きた。
ソファーでグッスリ朝まで寝てしまったようだ。
「やだぁ……爆眠しちゃった」
身体を起こすとアチコチ痛い。
腕をさすりながらキッチンに行くと、サプライズどころか準備も終わっていなかった。
「恵ちゃん、何時に帰って来るんだろ?スマホ……」
ソファーの下に転がっていたスマートフォンは何の色も発してなく、沈黙を続けている。
「もう、気にしないもん!」
お昼には準備も整い、することがなくなった。
コーヒーを啜りながら、トゲトゲした気持ちが湧いてくる。
「ちょっとぐらい齧ってもいいでしょう!」
買ったホールのクリスマスケーキをデデンとテーブルに置き、フォークも使わず、切り分けもせずにかぶり付いた。
「ここの美味しいゾーンを食べてやる!これがホントのサプライズよね!フン」
と、玄関のチャイムが鳴った。
鼻のアタマや口まわりに生クリームをつけたまま、玄関に向かう。
「どなた?」
「…………で……」
くぐもった声がかすかに聞こえる。
「恵ちゃん?」
「花凛……………ス…………」
勢いよくドアを開けると、トナカイがヘラヘラ笑いながら立っていた。
「遅くなってごめん!メリークリクリマス花凛」
「恵ちゃん!!」
トナカイの胸に飛び込んだ花凛ちゃんは、ギュッと抱きついた。
モフモフが気持ちいいが、少し埃臭い。
「これ、覚えてる?これ着て、花凛に告白したんだよな」
「うん、覚えてる。忘れないよ~……」
「あ!花凛ズルイぞ!先にケーキ食べただろ」
鼻のクリームをペロッと舐めて、恵介は幸せそうに笑った。
最初のコメントを投稿しよう!