悩める花凛ちゃん#lucid

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「楽しかったよね」 もう一度スマートフォンをチェックする。 「仕事、忙しいのかな」 花凛ちゃんは、スマートフォンを握りしめたまま、ソファーでウトウト眠ってしまった。 「んん……」 カーテンの隙間から明るい日差しがうかがえて、花凛ちゃんは飛び起きた。 ソファーでグッスリ朝まで寝てしまったようだ。 「やだぁ……爆眠しちゃった」 身体を起こすとアチコチ痛い。 腕をさすりながらキッチンに行くと、サプライズどころか準備も終わっていなかった。 「恵ちゃん、何時に帰って来るんだろ?スマホ……」 ソファーの下に転がっていたスマートフォンは何の色も発してなく、沈黙を続けている。 「もう、気にしないもん!」 お昼には準備も整い、することがなくなった。 コーヒーを啜りながら、トゲトゲした気持ちが湧いてくる。 「ちょっとぐらい齧ってもいいでしょう!」 買ったホールのクリスマスケーキをデデンとテーブルに置き、フォークも使わず、切り分けもせずにかぶり付いた。 「ここの美味しいゾーンを食べてやる!これがホントのサプライズよね!フン」 と、玄関のチャイムが鳴った。 鼻のアタマや口まわりに生クリームをつけたまま、玄関に向かう。 「どなた?」 「…………で……」 くぐもった声がかすかに聞こえる。 「恵ちゃん?」 「花凛……………ス…………」 勢いよくドアを開けると、トナカイがヘラヘラ笑いながら立っていた。 「遅くなってごめん!メリークリクリマス花凛」 「恵ちゃん!!」 トナカイの胸に飛び込んだ花凛ちゃんは、ギュッと抱きついた。 モフモフが気持ちいいが、少し埃臭い。 「これ、覚えてる?これ着て、花凛に告白したんだよな」 「うん、覚えてる。忘れないよ~……」 「あ!花凛ズルイぞ!先にケーキ食べただろ」 鼻のクリームをペロッと舐めて、恵介は幸せそうに笑った。
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