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29日の夕方、姥桜学園に1台のバスが止まっている。
そのバスに乗り込むのは、学園の全教師達と仏クラスのラスト2名だ。
薄々お気づきだと思うが、今年の年越しも理事長の母が経営するホテルでのどんちゃん騒──いや、お疲れさま忘年会だ。
プリンセス乙姫ホテルは改装中なので、夏合宿でお世話になった善光寺極み旅館での忘年会だ。
知らぬは花凛だけで、他の先生達は昨年経験済み。
さっさとバスに乗り込んでいる。
「長山先生、ここですよ?」
ゴロゴロとスーツケースを転がし、不思議そうな顔でバスに乗り込む花凛ちゃんは、タラップでア然とした。
黒木先生を中心に、もう酒盛りが始まっていたのだから。
「いったい何処へ、何を始めるのですかぁ?」
「まずは1杯だ、花凛。今から和歌山に向かう」
それだけ伝えると、黒木先生と愉快な教師達はお酒片手にどんちゃん騒ぎ。
忘年会の準備運動みたいなものだ。
隣に座る山崎が、予定表を長山先生に見せる。
……バス移動中以外、びっしり詰まる予定。
「待って下さい、どうして善光寺で座禅修行が入っているの?それに……どうして時任先生オンステージが……」
「長山先生、気にしないで?私は好きでやるのですから。やはり年越しマグロ解体ショーは、外せない行事ですから」
頬をほんのり染めた時任が、グビリとビールを飲む。
時任先生の隣に座る永慶先生が、待ち切れないとばかりに窓の外を見つめる。
──明日の昼前には、和歌山に着く。文秀さん、待っていて下さい。
心はすでに善光寺の永慶先生。
「おや?おや、おや?」
黒木先生が長山先生の腕を取り、細い指に輝くリングを目ざとく見つけた。
「何だ、花凛!恵介は上手くやったのか!そうか、そうか、めでたいな」
「あ……こ、これは、その……つまりぃ……結婚の〜」
モジモジする長山先生、今年一番のキュートな照れスマイルだ。
「花凛の結婚祝いを兼ねて、派手にいこう!GOTO姥桜学園忘年会ーーーー」
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