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仏クラスの2名はバスの上で、風を必死に感じている。
「2人だな……」
「あぁ、2人だ……油断して、バスから落ちるなよ?」
弘法も筆の誤り、幽霊だって気を抜くと知らないお坊さんや、霊能者に滅せられてしまうのだ。
渋滞に巻き込まれたら気をつけなくてはいけない。
世の中には、意外と視える人もいるものだから。
和歌山の善光寺極み旅館では、理事長の母が忙しく立ち回っていた。
今年は、インフルエンザに倒れる従業員も今のところ居らず、順調に営業出来ている。
明日の午後に到着する息子達を、今か今かと待ち構えている。
「無事に到着しますように……」
母の祈りは届くものだ。
バスは順調に和歌山へと向かっていた。
「起きて下さい、山崎先生〜!海ですぅ、海が見えますよ~」
「長山先生……後、5分……」
長山先生のはしゃぐ声に、酔いつぶれて眠っていた先生達が目を醒ます。
「本当だ……綺麗ですね~皆さんFight!」
丸山先生は、姥桜学園の夏合宿には参加できなかった。
勇太に付きっきりで、失踪中だったからだ。
「そうか。丸ちゃんは善光寺、初めてになるんだな?」
「はい。夏合宿は残念でしたが、また来年がありますから〜」
ずっと続いていく姥桜学園の夏合宿は、きっと伝統行事の1つになり、色々な思い出を生みだして行くのだろう。
創立6年目の姥桜学園。
丸山先生と黒木先生だけが、創立から姥桜学園で教鞭をとっている。
他の先生達は、まだ2年目のひよっこだ。
後に、姥桜学園最強教師軍団と呼ばれる事になるこの先生達は、寝癖のついた髪のまま、ヨダレを拭っている。
和歌山の海が、教師達を歓迎するように荒々しい白波をたてていた。
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