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「着いた、着いた。さすがにお腹が空いたな」
1時間前に、サービスエリアでご当地グルメを堪能したはずなのに、黒木先生の代謝は驚異的だ。
「ほんとに……早くマグロを」
時任先生の頭には、マグロ解体ショーしかない。
「皆さん、無事のお越し……良かったわぁ」
仮面マスクの理事長の母、仮面マスクの女将華は、テキパキと指示を出し、自らも荷物を運ぶ。
「お客さんのチェックインまでまだ時間あるから、皆さんゆっくり温泉でも──」
丸山先生とラシード先生が、子供のようにはしゃぎながら温泉へと走る。
日頃の疲れが、湯にとけていくみたいに思える極み旅館の美肌の湯は、冬場はとろみを増していて気持ちがいい。
姥桜学園の先生達が温泉を堪能している頃、理事長と華は何やらヒソヒソ話中だ。
意見が合致したのか、お互いにニヤリと笑えばさすが親子、よく似ている。
「ところで母、善光寺の皆さんは?」
「この時期ですもの、目の回る忙しさで……空?あなた達も少しお手伝いしてあげないと」
「わかりました。朝から夕方は暇なので、善光寺でお手伝いしましょう」
姥桜学園の秋の行事には、たくさん尽力して貰った善光寺のお坊さま。
特に文秀。
少しでも力になりたいし、お坊さま達の顔も見たい。
明日からは善光寺に通う事にした。
ちょうど夕方の鐘の音が聴こえてきた。
湯に浸かっている先生達も、目を閉じて耳を澄ます。
さぁ、先生方、そろそろ宴会の準備が始まりますよ。
どんな年越しになるのか。
取り戻した丸山先生、欠けることなく年が越せる幸せに、どの先生もにっこり笑顔だった。
「湯上がりには梅ジュースです!今年も3杯はイケます!」
ラシード先生お気に入りの梅ジュースは、旅館の売店横にて試飲できる。
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