年越しは賑やかに#lunge

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永慶先生、地獄に仏クラスの担任として姥桜学園へやってきた。 怨霊渦巻く北の校舎で、倒れても倒れても導きを諦めなかった。 荒行で心身を鍛え、勇猛果敢に幽霊生徒達を教えた結果、25人いた怨霊達は1年で半分になり、今ではラスト2人だ。 「私は永慶先生を尊敬しています。今夜の解体ショーは、永慶先生に捧げますから」 時任先生が解体ショーの舞台に立つ。 就任当初から、山崎には時任先生が男だとはわからなかった。 トイレでようやく気付いた。 心は乙女が口癖の時任先生、見た目も乙女だ。 マイノリティの偏見で、傷付かない訳がないのに、貫き通す乙女道。 「キェェェーイ!マグロは鮮度が命!」 今年も華麗に、繊細なマグロ包丁さばきに大盛りあがりだ。 「さぁ、お食べなさい」 黒木先生大好物の中落ちをお皿に盛り、嬉しそうに手渡す時任先生に、一般客はヤンヤの喝采だ。 「ありがたい。日本酒に変えるか」 謎が多い黒木先生だが、姥桜学園には欠かせない先生だ。 伝説のボディビルダーで、健康にはうるさい。 遊びも全力、お茶目な所がある。 この小さな身体に、どれだけのパワーが隠されているのだろうか。 そんな力強い黒木先生の弱点は、創立から一緒だった丸山先生だった。 黙って理由も告げずに姥桜学園からいなくなった丸山先生に、一番ショックを受けていたのは山崎よりも黒木先生だった。 人の心が可愛く読めちゃう丸山先生は、その丸い身体と同じく心もまあるい。 周りを明るくしてしまう、お日様のような教師だ。 それは、丸山先生が経験したいくつもの悲しみ、絶望を乗り越えたからなのだが。 山崎は、酔い始めた頭で考える。 やっぱり丸山先生の──フカフカなクリームパンのような手がなければ、姥桜学園ではないんだと。
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