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その丸山先生の後釜に、若松教育長がゴリ押しした長山先生は、今ではアイドル的な人気者になった。
就任当時、黒木先生や時任先生の激しい抵抗にもめげず、MJGの信頼を勝ち取った。
ようやく恋人である恵介から、プロポーズされたみたいだ。
今夜は、それを肴に飲む魂胆の先生方。
花凛ちゃんが照れながらも話すと、テーブルは大いに盛り上がる。
「美味い酒は長生きの秘訣だ。昨年の酒は、少々辛かったからな……」
「フフフ。黒木先生、丸山先生がいないと寂しいのです。ね、山崎先生?」
山崎も頷く。
全員で年越しできる事が、こんなに嬉しいとは。
「長山先生?結婚されたら姥桜学園は──」
「来ます!来るなって言われても来ちゃいますぅ」
おめでとうが飛び交う宴席に、女将華も嬉しそうだ。
いずれ息子も……そんな野望を抱いている。
忘年会は、時々感傷に浸りながらも満足、満腹でお開きになった。
「もう……一部屋で良かったのでは……」
山崎の部屋に全員集合した先生達、明日は早くから善光寺まで上らなければならない。
だから。
「トランプは子供の遊びだけじゃない、大人の知的な戦いだー!ソレだ!」
七並べ、神経衰弱、ポーカー、大富豪、そして今は、ババ抜きに興じている先生達。
「黒木先生、強すぎます……どうしていつもイチ抜けできるのかしら」
ジョーカーを持っている時任先生が、山崎へトランプを差し出しながら呟いている。
こうしていつも遅くまで遊んでしまう。
それでも、先生達にもこんな時間は必要だ。
布団に入ればみな、秒殺で眠ってしまうから。
夜明け前はシンシンと冷え込んでいた。
山崎は、一人で旅館の外へ出て裏山を見上げる。
夏合宿とは違う、厳しくも美しい刺すような空気。
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