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昨夜のどんちゃん騒ぎも何のその、先生達の食欲は旺盛だ。
女将華の手作り豆腐に舌鼓をうつ永慶先生、今朝はお魚も食べている。
食事が終われば、善光寺へと続く山道と階段を上らなければならない。
食事、特にタンパク源は大切なのだ。
「30分後に山道入口に集合しましょう」
大晦日の除夜の鐘、新年の初詣、これからたくさんの行事をこなす善光寺のお坊さま達。
もちろん日々の修行も、寒い冬は厳しい。
御守りや御札も、ひとつひとつ祈祷をし念を込めてから販売している。
人気の、干支が刺繍された善光寺の御守りは、作っても作ってもあっという間に売り切れる。
「花凛も欲しいな……恵ちゃんとペアで持っていたいです~」
「なら、せっせと上がれ。今なら参拝客も少ないから、買えるかも。しかも来年はうさうさだ。かわいいからすぐになくなる」
息を切らしながら長山先生は、先頭で上っていく。
御守り、御守りと、唱えながら。
中腹のお休み処は、準備に忙しそうだった。
再会を喜び合う間も、地元の爺ちゃんや気の早い参拝客がチラホラお休み処で休んでいる。
「夏はひたすら冷たい飲み物だったけど、今は、甘酒やお汁粉に変わっていますね?」
「山崎先生、甘酒ってどんなお酒ですか?」
関西、播州が発祥の地だとか言われる甘酒は、奈良時代から飲まれていた、米麹で作る白濁したお酒だ。
今は、アルコール度数はほとんどない。
「長山先生、温まるから飲んでみて?」
どろりとした甘酒が入った湯呑を、長山先生が手のひらで包み込むとプンと甘い麹の香りの中に、生姜の香りもかすかにする。
「ホントはね、下りる時に飲むのが正解!疲れが吹き飛ぶんだから~」
「帰りも寄って、飲みます〜」
売り切れていなければ良いが。
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