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善光寺に到着すると、すかさず丸眼鏡の大秀和尚が出迎えてくれた。
先生達全員で、秋の行事の尽力に感謝の言葉を述べる。
「元旦のお昼までですが、お手伝いさせて下さい」
理事長の申し出に大秀は大喜びだ。
12月30日、善光寺は参拝客で溢れかえり、大晦日、元旦はいつも記憶がないくらいに忙しい。
「文秀と南秀を呼びましょ」
やってきた文秀は相変わらず無口で、全秀はおしゃべりだ。
デコボココンビに誘われ、さっそく御守りを作るお手伝いだ。
「助かります!作っても作っても、祈祷しても祈祷しても切りが無いのです~。あいたになったらカラッポや」
──お前は口ばかり動いて手がお留守や……。
姥桜学園の先生達は、せっせと御守りを作って行く。
ある程度纏まると、文秀が祈祷するために本堂へと運んで行った。
外は朝から参拝客で溢れ、賑やかな善光寺なのに、この離れはとても静かで心地よい。
昔ながらのストーブで部屋は暖かく、油断すると眠くなってしまうくらいだ。
時折、かすかに笑い声が聞こえる。
お昼前の善光寺、只今参拝客はMAXになっている。
「足が攣った男性を、隣の部屋に運ぶのを手伝ってくれませんか?」
スススと足音もなくやってきた南秀、息も切れない仏道。
ラシード先生と丸山先生が南秀に付いて行った。
「あ……いがんでしもた!」
善光寺一番年下の全秀、まだまだ修行が足りないようだ。
「ほいたらお昼の鐘をついて来ます」
全秀のつく鐘の音が伸びやかに響き、先生達もぐうんと背中を伸ばした。
タイミング良く、大秀が宿坊から届いたお昼御飯を運んで来てくれた。
「一服して、午後からは体験修行の付き添いをお願ら。ずっと座っててもしんどいからなぁ」
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