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「大秀さま!この御守り、夕方にはなくなりますか?2つ買って帰りたいの」
自分で仕上げた白と緑の干支御守り、うさぎが可愛らしくて気になっていた。
未来の旦那様と自分と。
「長山先生、ご結婚されるんけ?そりゃあめでたい、めでたい。どれ、この坊主が特別に祈祷して差し上げよ」
やったね、花凛ちゃん。
仏様はいつでも見ているのだ、一生懸命に生きる者達を。
ほんのり頬を染めた長山先生、いつか恵介と一緒にここへお参りに来る事もあるだろう。
永慶先生は、善光寺のお坊さま達と一緒に食事をさせて貰った。
宗派が違えば作法も違うが、文秀が丁寧に教えてくれる。
順番に昼食を取り、今年も大盛況だった座禅や写経、写仏をサポートする。
上手く座禅が組めなくて、床じきに転がる外国人、正座で足が痺れた若者グループは、へっぴり腰でのたうち回っていた。
アニメのような仏さまを描いた人、見事な仏さまを描いて大秀を唸らせた人もいた。
「一日とて同じ日はないのです」
そんな様子を目を細め見守るお坊さま達に、姥桜学園の先生達もそれぞれ感慨にふけっていた。
学園でも、同じ日などない。
毎日が違って、毎日輝き方も違う。
それに気付けたならば、一日という短い時間を、精一杯生きる事ができる。
「お寺も学校も同じですね?しかもお寺は、一期一会だ」
次々とやって来る参拝客を、善光寺は静かに受け入れる。
そこに拒絶はない。
山崎は、手を合わせる参拝客の後ろ姿を感慨深く見つめた。
──どんな生徒でも、僕にとったらかけがえのない生徒達だ。……早く会いたいな、薔薇乙女達に。
「早く会いたいとか思っているのだろ、山崎先生」
「わ、悪いですか、黒木先生!」
「悪くなんかないさ。奇遇だな、私も生徒達に早く会いたいと思っていた」
黒木先生の瞳も、遥か遠くで年越しを楽しんでいるだろう乙女達を見ているようだ。
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