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「まぁ、気を落とすな。帰りに干支御守りを買えば、来年はなんとかなるだろう。イッシッシ」
黒木先生にイジられ、鼻水を垂らしながら熱いお茶を啜る若者三人は、ますます小さくなっている。
夕方、善光寺の鐘が鳴らされる。
それを合図に、参拝客も先生達も山を下る。
見送ってくれるお坊さまに手を振りながら、冷えてきた山の空気をかき分けるように階段を下りて行く。
「先生、また、あいた〜」
「はーい、また明日〜」
旅館に帰れば、疲れた身体を温泉で癒やし、再びどんちゃん騒ぎに明け暮れるのだろう。
もうお約束の「あつまれ山崎の部屋」は、今夜も開催される。
元旦の昼まで続く先生達の冬休み。
終わればまた新しい一年が、手ぐすねひいて待っている。
だから今だけは、そっとしておこう。
二日酔い気味の先生達が見た、善光寺からの初日の出は、酔も吹き飛ぶ荘厳さだった。
薄モヤがかかる和歌山の町並みが、ゆっくりと姿を現す。
それぞれの胸に誓う新しい目標は、新しい姥桜学園を作って行く。
卒業式まで3ヶ月弱、寒い冬でも行事はある。
「年明けは、焼きいも大会からですね」
地域住民を巻き込んでやった「どんと焼き」は、教育委員会からクレームが付き中止になった。
体育祭と同じパターンだ。
負けてはいない理事長は、それでも焼きいも大会は死守した。
乙女から焼きいもを奪うのは、理事長を退任するくらい罪だからだ。
「フフフ、生徒達は冬になると、倉庫の前を行ったり来たり。ソワソワしていますわ?」
さぁ、姥桜学園へ。
先生達はlunge(突進)する。
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