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教室のドアから顔を覗かせたのは男の人で、恐る恐る入って来る。
1人、2人、3人。
ニコニコしている山崎の隣にやって来た3人の男の人は、もじもじしたり、目が泳いでいたりと緊張からか挙動不審だ。
「新しい生徒を紹介します。さぁ、井手さんから自己紹介をしてください」
ちょっと待ったあああぁぁーー!!
薔薇乙女達の、一瞬止まっていた時間が動き出した。
口々に喋り、怒り、野次を飛ばす。
前の3人はタジタジで、黒板を背に身を寄せ合う。
まさに、蛇に睨まれた蛙状態だ。
「説明しますから、静かに!」
山崎の言葉に静まり返る教室。
それでも男3人は怯えている。
「今年度から姥桜学園は、男女共学になりました。これは理事長の悲願だそうです」
瞬間、天井のパトランプが回り始める。
新学期早々、奴が来る。
「いけませんね、山崎先生。せっかくX先生から山崎先生へ昇格したのに、中身はX先生のまま……乙女達にわかるように何度でも、親切丁寧に説明しないと」
ぎいやあぁぁああーーー理事長ぉー!!
無制限に好きーーー!!
今年度もよろしくおねがいします〜!
「乙女達を不安にしてしまって申し訳無い………。男女共学はもう少し先になると思っていたが、ある程度申し込みがあってね」
姥桜学園の噂を聞いた地域住民、チャンスがあれば我も我もと申し込みは増えている。
ただし全員女性で、特に50代が圧倒的に多い。
ところが、昨年度の運動会、学園祭、どんと焼き大会などに参加した男性達が、今年度初めて申し込みをしたのだ。
完璧な受け入れ体制が整っていない姥桜学園だが、理事長は共学に踏み切った。
「やらずに後悔するより、やって後悔する方がマシです。準備うんぬん言っていたら、後何年かかるか……父の遺言でもありますし」
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