向う側の初恋#longing

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ぎいやあぁぁああーーー!! 遺言キター!遺言強し、遺言唯一無二ーー! 共学に賛成するー!理事長を信じる! 遺言を蔑ろにしないわ、私達っ! 父親思いの理事長が好ぎーーー!! 「ありがとう薔薇乙女達。薔薇漢達と仲良く、勉学にスポーツに励む事。期待しているよ、ではアデュー」 理事長はカモミールの香りを残し去って行った。 男女共学姥桜学園、新学期が始まる。 「それでは自己紹介を。井手さん?」 井手は残り2人に励まされ、手を握りあい、気合いを入れて教壇に立った。 足が震え、ちびりそうなのを内股で凌ぐ。 「え、っと、。井手正俊(いでまさとし)です。うちはカミさんが稼ぎ手で、僕は専業主夫ですが、だからこそ学びたい事がたくさんあります。な、仲良くして下さい」 薔薇乙女達が頷きながら拍手する。 すんなり受け入れられたみたいだ。 ホッとした顔で教壇から降りた。 「僕は高田純平(たかだじゅんぺい)です。ポンパパーンの入婿で……度胸をつけて来いと言われて入学しました。一緒懸命頑張ります」 高田の自己紹介は、猛獣の雄叫びに掻き消されている。 パン屋『ポンパパーン』は、姥桜学園の乙女達には神パン屋さんで、お世話になりっぱなしだ。 おもに食欲の部分で。 高田は大歓迎の雄叫びに、ブルッと身震いした。 「私は森本拓馬(もりもとたくま)です。会社を早期退職し、自分探しの途中です……」 「しょげてる暇はないよ~。しっかり自分を取り戻しなよ!」 前田けいの放った言葉に少し赤くなりながら、森本拓馬は教壇を降りた。 3人の薔薇漢を迎え、薔薇クラスは23人になった。 一番後の席で、身体を小さく縮めている乙女がいる。 室井真姫だ。 前の大山のどっしりした背中に、隠れるように身を潜めていた。 ──なんでよりによって殿がここにいるのよ~。 殿じいとは、最後に自己紹介した森本拓馬の小学生時代のニックネームだった。 勉強がよく出来て物知り。 しかも子供にしては落ち着いているから殿みたいだとからかわれていた。
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