18人が本棚に入れています
本棚に追加
誰もいない朝の職員室に、山崎は少し俯く。
朝が早い丸山先生はいつも一番乗りで、美味しそうにお茶を啜っていた。
山崎が挨拶すると、季節にマッチしたあたたかさのお茶を必ず淹れてくれた。
丸山先生が使っていたポットをそっと撫でる。
その手をガシッと掴まれた。
驚きと期待感で顔を上げると、黒木先生がニヤリと笑っていた。
「ちょうど飲みたいと思ってた。ごちそうになるぞ、山崎先生。温めで頼む、丁寧にな」
「な!自分で淹れればいいでしょう?僕は……」
「情けないな。お茶の淹れ方もわからないとは。貰い手がないはずだ」
黒木先生にイジられているうちに、時任先生やラシード先生もやって来て、自分のお茶の好みを囁いて行く。
最後の永慶先生は白湯を所望のようだ。
ちなみに長山先生は水しか飲まない。
山崎は文句を言いながらもポットを手に取った。
丸山先生のクリームパンのような手を思い出しながら。
「皆さん、おはようございます」
理事長が爽やかに現れ、職員会議の始まりだ。
「共学になったばかりです、色々と問題はあるでしょうが、落ち着いて勉学に励めるように導いてあげて欲しい」
今年度は、ひとクラスに3名づつの男性生徒が加わった。
50組の薔薇、桔梗は比較的穏やかに受け入れられた。
70組の曼珠沙華も、和気あいあいだったと長山先生は報告していた。
問題は60組の水仙とアマリリスだ。
黒木先生のアマリリスは、激しい反発と反抗。
「男はいらない」を合言葉に、自己紹介も出来なかったくらい荒れた。
「年代的なものもあるかもしれないが、時間がかかるだろうな……」
ラシード先生の水仙は大歓迎だったのだが、徐々に不穏な空気になった。
漢生徒の中に、若々しいイケジジイがいたのだ。
そのイケジジイの関心をひきたい水仙乙女達。
「大奥とはこのような状態だったのでしょうか……皆、目が……獲物を狙う蛇のようになっています。私の日本語、だいじょうぶですか?」
最初のコメントを投稿しよう!