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「クロカゲはどうしてそんなにボクにイジワルなんだよ! 塾や学校でだって、家で母さんや父さんがいる時だって、ニャーニャー鳴かないでよ! バレちゃうじゃないか! その度にボクは皆に変な目で見られるんだ! キミのことを自転車でひいちゃったのはボクだし、悪かったって思ってる。だから、ボクのおこづいでキャットフードだって買ってあげたんだよ。クロカゲが食べたい時間に食べれなくて、お腹が空いたんだってことは、わかってるよ。だけど、ボクの事情だってわかってよ! お風呂だって入れないんだよ」
怒りながら涙が止まらなかった。
どうしたらいいのか、どうしたらクロカゲがボクの事情をわかってくれるのか。
泣きながら足元のクロカゲをにらみつけたら、小さく「ニャァン」と鳴いて目をパチパチとしばたかせた。
その目がボクを責めているみたいに思えて、余計に涙が止まらなくなった。
「そんなに文句があるなら、早くボクの影から出てってよ。ボクに迷惑をかけないで!」
猫相手にムキになり、怒って泣いてる小学校六年生なんて、みっともない。
ここが誰も通らないあの道で良かったと思った。
ボクの大きなため息を聞いた後、クロカゲは目を閉じた。
目を閉じてそれきり静かになってしまった。
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