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猫は気まぐれだってこと、わかってるよ。
クロカゲは野良猫だし、懐かないのかもしれないけど、この一週間ずっと一緒にいたんだから、少しはボクの気持ちをくんで欲しかった。
だけど、ボクも言いすぎた。
出ていけるもんなら、クロカゲだってそうしたかったはずだ。
クロカゲをこんな風にしたのは、ボクなのに……。
涙を拭きながら、またペダルをこぎ始める。
「家に帰ったら、ご飯をあげるから。もうちょっと待って」
クロカゲからは返事はない。
まるでクロカゲがショボンとしているみたいに思えて、ツキッと心が痛くなった、時だった。
この細い道に入ってきた車が、前から走ってくるのに気づき、自転車を端っこに寄せて止めた。
すれ違うのがやっとの幅の道なのに、車はボクに気づいてないみたいだ。
グングン大きくなってくる車のライトに、体をすくめて目を閉じた。
『ダメだ、きっとぶつかる!』
キ――――――ッという車のブレーキ音が間近で聞こえて、次の瞬間ボクはドンと何かに突き飛ばされた。
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