クロカゲ

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 きっと猫は逃げたんだ。  頭を洗いながら、そう思った。  ボクの自転車におどろいて、どこかの塀に飛びあがったんだろう。  それにしても、近くに行くまで気づかないなんて猫のくせに鈍感すぎる。  目だけしか見えなかったから、アイツはきっと真っ黒な猫だったんだろうな。  身体を洗い流すと、転んだ時にできた傷がしみた。  ツイテないな、結局お母さんにも宿題のせいで遅くなったことがバレて怒られちゃったし。  はああ、とおおげさなため息をついてザブンと風呂に飛び込んだその時だった。 「ニャアアアアアアアア!!!」  真っ白なお湯の中から、真っ黒なものが飛び出した。  その真っ黒なものには金色の目がギョロリ。 「ウワアアアアアアアア!!!!」  お風呂場を飛び出して、ハダカのまま、お母さんの元に悲鳴を上げながら逃げた。
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