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こんなヤバイことは絶対に誰にも言えないと思った。
だってボクは自転車で猫をひいちゃったんだ。
暗がりの道で真っ黒な猫をひいて転んだ。
そしたらボクの影に猫が入ってしまったなんて、一体だれが信じるのさ。
前にお隣さん家の猫を預かったことがある。
その時に渡し忘れたキャットフードがキッチンのパントリーにあるのを覚えていた。
お父さんやお母さんが寝室に入った時間を見計らって、静かにそれを取りに行く。
猫缶が二個と半分入ったカリカリのキャットフード。
全部持ってすぐに部屋に戻り、影の元に猫缶を開けておいてみた。
あっという間に猫缶の中身は無くなって、ようやく「ニャーニャー」もおさまった。
やはりお腹が空いていたらしい。
「オマエさ、影から出てこれないの?」
金色の目はじっと俺の顔を見て、ゆっくりと目を閉じる。
「え? おい、ちょっと待てって」
ボクの声に、もう一度だけ細く開いた金色の目が「シャアッ」と嫌な声で鳴く。
まるで「うるさい」とでも言うように。
それからゆっくりとまた目を閉じて、どうやら眠ってしまったようだ。
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