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どうしたらボクの影からクロカゲは出ていくのだろう。
ボクの影に猫がいます、なんて言ったら、頭がおかしくなっちゃったって思われるかもしれない。
病院に連れていかれて、変な研究とかされちゃうかもしれない。
影とボクを切り離す手術とかされちゃったりして。
「ユウタ? どうしたの?」
ぼんやりと勉強をするボクの前に、おやつを置いてくれたお母さん。
心配をかけないように、大丈夫だよと笑ってみせた。
絶対に誰にも気づかれてはいけない、お母さんにだって。
ポケットからカリカリを少しだけ床に落としながら、おやつを食べる。
塾に行く前に今日はご飯をあげておこう。
授業中に鳴かれたら大変だ、そう思っていたのに。
宿題をギリギリまでやっていたボクは、そのことをすっかり忘れてしまった。
「ニャア」
もうすぐ授業が終わるというのに、足元からそんな声が聞こえた。
ポケットに入れていたカリカリも数が少なくて、足りないよ、とクロカゲはまた鳴いた。
皆がボクの方を見るから、ボクは泣き出したい気持ちをおさえて。
「にゃあ」と笑ったら、先生がものすごい顔でボクをにらんできた。
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